ごあいさつ

医学教育学講座 教授
長谷川 仁志
MD PhD FACP

みなさんこんにちは。医学教育学講座の長谷川仁志です。本講座は、医学教育の主役である基礎医学・社会医学・臨床医学・医療行動科学・医学英語教育の各分野および県内の協力医療機関と連携して、各分野の教育改革を分野および学年横断的にサポートし、将来に向かって教育の質保証を実現することを目的として2013年に新設されました。

本講座の教育・研究の取り組みをご紹介いたします。

卒前6年間の医学教育は、臨床実践能力が保証される医師免許取得の必須条件であるのみならず、その後も生涯学習を継続して研鑽を積むことにより、自ら問題を解決していくアクティブラーニング実践力を磨くとともに、患者さんあるいは医療チームの誰からも信頼される人格・コミュニケーション能力・プロフェッショナリズム・国内外との連携力(グロ-バル化)を備えて、広義のチーム医療教育・研修を充実することができるような人間力を育む意義を合わせ持っています。医学科卒業生のほぼ100%が医師免許を取得するため、医学部教育の責任は相当大きいことになります。

この数十年の間、医学各分野の専門化・高度化がすすみ、学生が接する各分野の知識や情報量が膨大となり、医学教育があるべき姿について様々な課題が生じてきました。各科専門に偏った教育体制の問題点に対し、1970年代から欧米中心に新たな提言がなされました。それでは卒前教育では各分野がバラバラに専門性に偏って教育するのではなく、症状・症例・事例ベースで統合し、全ての医学生が修得すべき必要不可欠な(コアな)基本的教育目標を精選して必修のコアカリキュラムとすることが推奨されてきました。そして、将来どのような分野に進んでも社会が期待する理想的な医師として必須の各分野の総合的臨床能力(臨床推論・問題解決力・初期対応・一般診療)にかかわる内容と、医師-患者関係や多職種チーム医療を充実するためのコミュニケーション能力育成を重視し、実際の臨床現場でそれらを総合的に実践できる能力(コンピテンス)の修得を担保する必要性が強調されました。このような改革は、欧米中心に30年前から進んできましたが、日本では、やや遅れてきた経緯があります。医学教育の国際認証時代となった、現在、これをきっかけに日本の医学教育が大きく改革されつつあります。

このような背景で、主な活動としては、症例・事例ベース等で各分野をできるだけ有機的に統合し、コミュニケーションスキル・医療行動科学も含めて知識と技能と態度学習を1年次からスパイラルに絡める形で教育展開すること、この際、各種アクティブラーニング手法(PBL(Problem based learning)、TBL(Team based learning)、シミュレーション教育、e-ラーニング等)と、各種評価手法(特に模擬的状況下のパフォーマンス評価:客観的臨床能力試験・Objective Structured Clinical Examination (OSCE))や臨床現場における種々のパフォーマンス評価)を、入学直後から診療参加型実習中そして卒業まで段階的・効果的に導入し、全卒業生への実践的な教育の質保証を実現することを目的としております。医学英語部門では、1年生で医学英語(英語医療面接OSCE)と文化人類学のネーティブ英語講義を通年で実施してグローバル化への対応とプロ意識の向上を目指しております。

以上述べてきましたように、本講座では、各分野と連携して社会が期待する理想的医師育成のための改革が確実に推進できるように、各種アクティブラーニング手法と評価法を積極的に導入し、1年次から卒業まで、さらには卒後の生涯教育・多職種連携教育まで、分野・学年横断的な統合教育体制をシームレスに構築し、国内外の医学教育の発展に寄与していきたいと考えております。