長谷川仁志教授が代表を務めた「かかりつけ医機能報告のための医師の研修項目の詳細な整理等を行う研究」に関する報告が、厚生労働科学研究成果データベースに掲載されました。
2025/06/18 カテゴリー:お知らせ
長谷川仁志教授が代表を務めた
「かかりつけ医機能報告のための医師の研修項目の詳細な整理等を行う研究」に関する報告が、
厚生労働科学研究成果データベースに掲載されました。
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・研究目的
超高齢社会と生産年齢人口の減少が進む中、地域の医療ニーズに応じた教育・研修の充実が必要となっている。本研究は、令和7年4月に施行される改正医療法に基づく「かかりつけ医機能報告制度」における「かかりつけ医機能に関する研修の修了者の有無」に関する報告に資する具体的な研修項目を検討し整理することを目的とした。
・研究方法
研究体制としては、研究代表者による総括検討委員会のもとに、3つのテーマ別作業班を設け、①頻度の高い疾患への対応および初期救急、②高齢者診療・介護制度・障害者支援、③在宅医療・多職種連携・医療DXの3領域において関連学会の協力を得て検討し、座学研修(知識)および実地研修(経験)の内容を体系的に整理した。適宜、統括検討委員会で全体調整を行った。
・結果と考察
第1班は、頻度の高い疾患および初期救急対応に関し、診療の初期対応、鑑別診断、マネジメント、緊急時対応、専門医紹介までをカバーする体系的な内容を提示した。第2班は、高齢者診療や介護・障害者福祉制度に焦点を当て、老年症候群、認知症、生活習慣病、感染症、がんケア、多職種連携等の幅広い観点から研修項目を整理した。また、障害者への合理的配慮や医療機関での対応も詳細に検討された。第3班は、在宅医療導入、多職種連携、医療DXを活用した医療提供に関する研修項目を構築し、地域包括ケアの中核を担う医師の育成を見据えた実践的な視点を提供した。また、実地研修(経験)についても、診療を通じた実践的理解と実践力の養成を目的に、幅広い診療領域での対応、入退院支援、在宅医療、介護・障害者福祉との連携、地域保健活動等が望ましい内容として整理された。これらは、研修実施団体が各医師の実践を評価する形式を想定し、選択性を担保する設計となっている。座学研修はEラーニングや各種研修会、学会活動を通じて提供され、医師が自身のニーズや地域特性に応じて柔軟に選択できるように構成されている。とくに、かかりつけ医機能に求められる知識は疾患対応にとどまらず、チーム医療や在宅ケア、福祉制度との連携、さらには合理的配慮といった医療と社会を結ぶ知識の強化が重視された。
・結論
本研究は、かかりつけ医機能報告に対応する研修の全体像を整理し、実地研修と座学研修の両面から、実践的かつ柔軟な学びを支える教育体系の基盤を提示した。今後は、本研究成果に基づき、研修実施団体による体系的な研修展開とEラーニング教材の開発等が進められ、地域医療の質向上と持続可能な制度運用の一助となることが期待される。本研究の成果が、今後、新たにかかりつけ医機能報告のための研修実施を検討する各研修実施団体によって活用され、かかりつけ医機能の質的向上と地域包括ケアの推進に資することが期待される。